現役がみるFAS業務の厳しさ、キャリアのマイナスの側面、転職志望者が覚悟すべきこと

FAS転職

異業種・未経験からの転職志望の方は特に、FASにおけるキャリアのマイナス面や働き方の不安があると思います。

筆者自身も転職活動当時のことを思い返すと、

  • この業界を志望して、自分のキャリアにプラスになるのだろうか?
  • めちゃくちゃしんどい仕事なのではないか?
  • 専門が狭く潰しが効かない人材になってしまわないだろうか?

などと、何度も自問自答して迷っていたことを思い出します。

そういった当時の不安を思い出して、業界を経験した今だからこそわかるマイナスの側面とその対策を解説したいと思います。※本記事では、あえて業界のネガティブな面を包み隠しなく列挙していきます。

(筆者について)税理士でも公認会計士でもなく業界経験もなかった状態から独立系FASに転職し8年が経ちました。FAS業界の実体験と業界人脈から得た知見をもとに、FAS転職に役立つ情報発信をしています。

働き方:時間的・精神的の両面でハードワークが基本。得られる経験と金銭報酬を魅力的と思えるか。

「ブラック企業」などという言葉が流行した昨今の働き方改革の波は、FAS界隈にも確実に押し寄せています。

ただ、現状はまだまだ長時間残業が残っているのが実態です。一般業界にはないハードワークは覚悟しておくべきでしょう。

そして、その引き換えに得られる経験値や金銭報酬も一般業界の比ではありません。そのバランスをどう考えるのかが肝心です。

土日祝稼働は当たり前。ひたすら仕事に向き合う日々が続く(続いた)

(上記の通り一昔前の話です。だいぶ改善されてきていると聞いています)

特に筆者の時代は、まだまだ長時間労働が黙認されていましたので、土日祝日もほとんど休んだ記憶がありません。納期前はとにかくプレッシャーと眠気との戦いです。

また、ハンズオン(支援先に直接参画して業務改善などを行う仕事)の案件をやっていたころは、顧客の近隣に出張に出て3週間ほど帰ってこれなかったといった体験談もあります。

期限が厳しい性質の仕事が多く、短時間で膨大な作業が求められることも一因

あらゆる企業活動は一刻を争うものであり、M&Aや企業再生といった重要性が高いタスクであれば尚更です。

この様な局面でFASが担当する調査や調整に長い時間をかけたくないというのはステークホルダーの共通認識です。時間が経てば経つほど何らかの不確定要素が起き、案件に支障が生じる可能性が高くなります。故に、FASに対する納期要求も厳しくならざるを得ません。

このような事情も、FASに長時間労働が流行る要因の一つと言えるでしょう。

精神的にも負担が大きい仕事。数値を扱う業種の宿命か。

コンサルタントの仕事はファクトに基づいたアウトプットが基本ですが、FASの場合は依拠すべきファクトは財務数値です。

財務諸表や経営資料を緻密に計算した上で一定の結論を出す業務は、労力がかかる上、「間違えていないか?」というプレッシャーと常に戦うこととなります。金額、数値を扱う仕事ゆえ、特に株価計算や税務ロジックなどにおいては、些細なミスやロジックエラーによりクライアントに甚大な損失を与える可能性がある仕事と言えます。

あるいはFASの一分野、M&Aアドバイザリーといった仕事でも、成功すれば莫大な報酬を得られる反面、案件がいつ消えてなくなるかといったプレッシャーは半端なものではありません。筆者自身も案件進行中は四六時中気が気でなかったことをよく覚えています。

厳しい仕事と引き換えに得る、経験値と金銭報酬のリターンを魅力的と思えるかどうか。

ここまで散々仕事の厳しさを紹介しましたが、このような苦労と引き換えに得られる経験値と金銭報酬は、一般の仕事の比ではありません。

金額面では、年収1,000万円は通過点に過ぎないと言えるほど各ファームの上位層は高い報酬を得ています。

また経験値にしても、財務分析をベースとした経営・ビジネス感覚はあらゆる局面で活躍できるスキルと言えます。FASを経験したOBがPEファンドや上場企業幹部、起業等、華々しい活躍を見せていることがその証左と言えます。

その後の人生を見据え、修行のつもりでFAS業界に飛び込むということであれば、その選択は間違いではありません。筆者自身も、FASでの経験と報酬がなければ今の自分はないと言い切れるほど充実した業界ライフを送れたと感じています。

仕事内容:業務は作業屋としてのカラーが強い。コンサルタントとしての本番は概ねマネージャー/ディレクタークラスから。

コンサル業は「高級人材派遣」などと揶揄される通り、専門知識もさることながら工数をかけること自体がバリューの源泉であるコンサルティングファームが少なからず存在しています。

FAS業務についても、業務領域によってはその性質は強いと言えます。特にクライアント企業の経営に直接関わる機会が増えるマネージャーやディレクター(マネージャーより上の階級)に達するまでは、ひたすら作業に徹する仕事内容となることを覚悟するべきです。

専門知識に従い淡々と作業をこなすことが価値の一つ

特に会計・税務の専門寄りの業務において、「作業屋」要素が強くなります。具体的に言えば、バリュエーション全般、財務デュー・ディリジェンス(財務DD、FDD)などの業務が挙げられます。

これら業務は、コンサルテーションというよりは、専門知識に従って決められた手続きを淡々とこなすことでバリューを発揮するサービスです。

一般的なコンサルティングのようなイメージをもってこの領域に挑んでしまうと、早晩ミスマッチを起こすことでしょう。

FASの主戦場、M&A関連業務を筆者主観で「作業的・コンサル的、営業的・専門的」度合いを示したマトリクス(各業務の詳細は(関連記事)FASの業界概要、仕事内容、ポストキャリア詳解をご参考ください。)

FASコンサルタントは、事業戦略や営業活動の専門家ではない。顧客支援内容にも限定的になりがち。

また、FASのコンサルタントは現状把握や経営分析は得意であっても、未来に向けた戦略構想やトップライン(売上)向上のための施策コンサルテーションは比較的苦手としています。そのようなサービスが必要な場合は別の専門家(戦略コンサルやマーケターなど)が招聘されるケースも散見されます。

したがってFAS社内にいても事業戦略やマーケティングに関するコンサルティングを経験できる機会はほとんどないとみてよいでしょう。

※とはいえ、FASの業務内容はビジネス感覚を磨く機会にあふれていますので、FASできちんと実績を出すレベルになれば、戦略・集客といった広範な知見も自然と身につきます。実際、筆者自身もFAS業務で培った感覚をベースにマーケティングや戦略コンサルティングに類する業務も提供しています。

顧客価値最大化を意識して取り組めば、FASの枠にとらわれない総合力が身につくはず。

ここまで論じた通り、FAS業務は専門性が高い反面、その枠にとらわれて対応可能範囲が狭いコンサルタントになってしまいがちです。

ただ、筆者自身の経験から言えばそれは淡々と専門業務をこなしているだけの人材が陥る罠であると考えます。クライアント企業とのコミュニケーションを大切にし、FAS業務を起点として顧客価値最大化のためあらゆる知恵を絞るコンサルタントは、専門領域にとらわれない真に顧客に求められるサービスを提供できるプレーヤーに成長します。そのような活躍が出来る人材は自然と収益も地位も上がっていきます。

自身が担当している業務が顧客にどのような価値をもたらすのか、どのようにすれば顧客価値が最大化するのか。そういった考えをめぐらさなければいけない点では、本質的に普通のコンサルタントと何ら変わらないといえます。

将来性:プロモーション(昇進)できないと、ネクストキャリアがキツい。乗り越えれば、未来は開ける。

FAS業界のキャリア事情は、他のコンサルティング業界と同じく「マネージャーに上がれるか否か」が極めて重要です。未経験からマネージャーに上がれる才覚を発揮できれば、あとは時間さえかければ自然とポジションやスキルは上がっていく可能性は高いですが、マネージャーに届かない人材は大変です。

もしFAS業界に入れたら、周りのマネージャー陣を見渡して、どのような特徴、能力、働き方をしているのかをよく研究するのがよいでしょう。

また、全体として昇進や退職のサイクルが早く、そしていわゆるアップ・オア・アウト(Up or Out、上がるか辞めるか)の世界である点もコンサル業界と同じ特徴と言えます。※もちろん会社に依ります。傾向としてのお話です。

代表的なネクストキャリアは投資ファンドや経営企画職など。但しFASでのプロモーション達成前提と考えたほうが良い。

FASで経験を積んだ人材の多くは、次のような金融専門職へとキャリアアップしていきます。但し、FASで昇格できない人材がこういった転職を実現するのは少々難しく(時代の流れで徐々に緩くはなっていますが)、基本的にはキャリアアップはマネージャー以上の職位経験が前提と考えてよいでしょう。

FASで成長できた人材の代表的なネクストキャリア

  • PEファンド(プライベート・エクイティファンド:非上場企業の買収とバリューアップを専門とする会社)
  • 上場企業等の経営企画担当役職員(M&Aや事業戦略等を担当する部署)
  • その他のコンサルタント(戦略系、総合系)
  • 起業(コンサルティング系が多い。これに関しては成否はプロモーションはあまり関係ない傾向。)

また、最近はFAS業界内での人材獲得競争が激化していることを背景に、ジュニアクラスでとどまっている人材がFAS同業で転職(転社)を繰り返し、待遇を上げることに成功しているようです。マネージャー昇格に届かない人材の業界内の一つの生存戦略といえるでしょう。

加えて、ジュニアクラス・マネージャー以上のクラスを問わず、FAS転職前にいた業界に戻る人材が相応に存在します。FASで身に付けた能力を生かすためか、あるいは職歴的に他に選択肢がないためか、事情は色々あるでしょう。この転職がプラスに働くか、逆に単に元いた業界の職歴の穴となってしまうかは、やはりFASでしっかりとビジネスを身に付けられたか(≒マネージャーに上がれたか否か)にかかっているといえるでしょう。

自分で案件(ビジネス)を回せる力が、マネージャーに上がれる要件

FASをはじめとするコンサル業界のマネージャーは、基本的に自分の案件をビジネスとしてきちんと仕上げ、収益を自身で生み出す能力を身に付けた人材です。マネージャークラスは一般社員の一つ上の地位であり、一つの案件をしっかりとマネージして着地させることが主な使命であり昇格の要件となります。

一度取り組んだFASという仕事で、このようなビジネス能力を身に付けてからネクストキャリアに移るか。あるいはそれには至らない作業者としてFASのキャリアを終えるか。この差は、将来に与える影響は甚大です。

前段でキャリアとしてマネージャーに上がることが極めて重要、とご説明したのは、こういった背景があるのです。

向いていない人はとことん上がれず、自然と業界を去る

FASと言えども日本における雇用制度のもと運用されていますので、クビなることなどは早々はありません。とはいえ、昇進できない人は自ずから業界から去っていくこともまた事実です。

後輩に地位を抜き去られる屈辱、向いていないという事実を突きつけられる上長からのレビュー、のしかかるハイプレッシャーと重労働。

こういった状況が、自然と業界内の人材回転を促し、不向きな人材を外に出してしまう力となって作用しています。

こういった作用を受けてか受けずか、昇進できずに業界を去ってしまうと、FASにおいて経験できる財務分析をはじめとした経営・ビジネススキルを十分吸収できない状態で別業界に移ることになる可能性が高くなります。短期離職の経歴がついただけで終わる最悪のパターンと言えます。

地頭よりも、粘り強さ・数値に対する感性・手作業の早さがモノを言う

FAS業界特有の話として、数値分析と計算を多く扱う関係上、数字感覚が強い人材や、手作業(エクセル・パワポ)が高速な人材は重宝される傾向があります。

また、粘り強くリタイアせず仕事を続けること、数字を積み上げてファクトを追求すること、など。他のコンサル業種と比べると地頭の良さはあるに越したことはないですが、それ以上に「粘り強さ」は重要と言えます。

こういった要件を満たさない人材は厳しい戦いを強いられますが、独自のポジションを見つけて上手く立ち回る方がよくいるのも事実です。これから業界に挑む方としては、可能な限りこういった弱点は補強しつつ、立ち回りをよく研究していく必要があるでしょう。

担当顧客からリピートを勝ち取れるかどうかは若手の登竜門。専門性×人間力が重要

プロモーション(昇進)成否に重要な要素は、担当する仕事を1人称できちんと回せるかという点、そして目の前の担当顧客からリピートを貰えるか否かという点です。

リピートを獲得できる(あるいは獲得に貢献できる)ということは、顧客から信頼されるだけの専門知識を十分に身につけた状態といえますし、人間力においても問題なく業務に当たれていることが推察されます。

多くのファームにおいて、マネージャーという領域(通常は入社時点見て最初のプロモーションであり年収1,000万円を超える最初のライン)が見えてくるのは、この段階に達する出来ることが出来るかどうかと心得るべきでしょう。

向いてないと思ったら長期戦覚悟で挑め

ここまでの解説でご自身が向いていないと思いつつも、それでもFASを目指したいという方は、最初から5~10年程度の長期戦略を視野に入れて挑むことをオススメします。

プロモーションまで標準よりも長い年月を要し、後輩が先に上がってしまうような事態も生じることでしょう。それでも、5年、10年と食らいついて仕事に打ち込むことでようやく上がっていく人材がいることもこの業界の特徴だと思っています。

初めから期待しすぎなければミスマッチも減らせる、そういう意気込みもアリなのではないでしょうか。

FASに挑戦する覚悟が決まったら、具体的な行動を起こしてみよう

FASは、筆者が8年以上働いてきた実感として、上を目指す人に対しては自信をもって勧められる職業です。思い立ったが吉日、これを機にFASキャリア実現への第1歩を踏み出しましょう。

■FASの仕事内容がざっくり理解できている人→下準備としては十分です。転職エージェントに相談してみましょう。FAS転職を成功させるには、FAS業界に詳しいエージェント会社を起用することが必須です。以下の記事をご参考ください。

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■仕事内容をもう少し知りたい方→現役コンサルタントの目線で仕事内容を詳しく説明しています。ぜひ下記記事をご参考ください。

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冒頭の疑問に対する自主回答を紹介

冒頭に質問を3つ列挙しました。いずれも私自身が転職活動当時に不安・疑問に思っていた点です。

読者様にも共通する悩みになると思います。あれから8年以上経った今までの経験を踏まえ、先ずは端的に回答したいと思います。

この業界を志望して、自分のキャリアにプラスになるのだろうか?→結果的には正解だった

当時、私は何かは決まっていないものの専門的な知識に基づいた仕事をしたいと考えていました。

そういう意味で、FASを選んだのは正解だったと言えます。思いのほか専門分野も狭くなりすぎず、ビジネスに必要な様々なポータブルスキルを伸ばすにも格好の仕事だったと感じます。

めちゃくちゃしんどい仕事なのではないか?→その通り。時間的・精神的の両面で大変な仕事。

時間面では働き方改革の影響を受け近年はだいぶマシになっているとはいえ、やはり全体的には一般に比べ大変な仕事です。

更に数字を扱うことに伴うミス(些細なミスや誤認が、クライアントに莫大な損失を与えてしまう可能性など)の不安や、ハードな交渉を伴う業務も多く、精神的にも堪えます。

その代わりに得られる経験値や金銭的報酬も一般職業の比ではないため、そのバランスをどのように飲み込むか次第だと思います。

専門が狭く潰しが効かない人材になってしまわないだろうか?→杞憂だったが、ミスマッチを起こすと後がキツイ

財務会計が専門とはいえ、交渉術や文書作成をはじめとしたビジネススキル(いわゆるポータブルスキル)が身につく仕事と言えます。

こういったスキルをきちんと身に付ければ、大半のビジネス分野はその応用でこなせると感じます。

但し、ミスマッチ等の要因で早期離職となると、ひたすら作業だけして終わりスキルも身につかずという結果がちで要注意です。本サイトの内容をよくご確認いただいた上で志望を固めていただければと思います。

最後に:ネガティブ面も飲み込みFASで活躍できれば未来は明るい

筆者自身は、FASにおいて経験した苦労も喜びも、本当に経験して良かったと感じています。今現在こうしてきちんと仕事をできているのも、当時の経験があったからと思っています。

皆様も、迷いは多々あると思いますが、そういった点も飲み込んだうえで挑むのであれば、きっと良い成果を得られると思います。

本サイトをしっかり活用していただき、ご希望の進路を切り開けることを心から祈っております。尚、FASキャリアに関するポジティブな内容は、↓の関連記事にまとめています。是非合わせてご参考ください。

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