小説「ハゲタカ」と企業再生実務・FASのリアル。FAS転職はハゲタカに憧れるなら良い選択。

FAS業界研究

企業再生の仕事を扱うフィクションの代表作、真山仁氏の「ハゲタカ」。企業再生ファンド、いわゆるバルチャービジネスを扱う小説で、実写化もされ好評を博しています。

その影響力は強力で、FAS業界で仕事をしていても「『ハゲタカ』に憧れて転職してきた」、というコンサルタントを少なからず見かけます。

本記事では、「ハゲタカ」の世界と実際の再生ビジネスのリアルを、FAS業界の経験を踏まえて比較してみたいと思います。

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新装版 ハゲタカ(上) (講談社文庫)
大人気シリーズ第1作! 不良債権を抱え瀕死状態にある企業の株や債券を買い叩き、手中に収めた企業を再生し莫大な利益をあげる、それがバルチャー(ハゲタカ)・ビジネスだ。ニューヨークの投資ファンド運営会社社長・鷲津政彦は、不景気に苦しむ日本に舞い戻り、強烈な妨害や反発を受けながらも、次々と企業買収の成果を上げていった。(講談...

(筆者について)税理士でも公認会計士でもなく業界経験もなかった状態から独立系FASに転職し8年が経ちました。FAS業界の実体験と業界人脈から得た知見をもとに、FAS転職に役立つ情報発信をしています。メインコンテンツ:(関連記事)FAS転職完全ガイド!未経験でも勝てるFAS転職の基礎知識まとめもぜひご参照ください。

総論:「ハゲタカ」好きならFAS転職は良い選択

フィクションであること、また時代背景が異なることは飲み込む必要はありますが、作中に出る用語やビジネスの性質等に魅力を感じるのであれば、FAS業界は良い選択肢だと思います。

FAS以外では企業再生ファンドに就職するという手もありますが、未経験の受け入れという意味合いではFASの方が間口は広く可能性が見込めます。

FASと投資ファンドは相互密接な関係があります。まずはFASで経験を積み、ファンドへのキャリアチェンジ(転職はもちろん、出向の形をとる方も業界では頻繁に見かけます)を狙ういった動きが現実的な戦略と言えます。

「ハゲタカ」で派手に描かれるトランザクション、実際携わるとハイプレッシャーでキツい業務

「ハゲタカ」の描写はトランザクション(交渉、買収手続き)に重きが置かれており、再生の実行に関しては比較的あっさり描かれているように感じます。

M&Aのトランザクションは、見ている分にはドラマチックでエンタメ性がありますが、実際当事者になると精神的に負担が多い仕事です。

上手くいけば数億円、あるいは数十億円の成果が見込めるビジネスである反面、プロセス中はいつ何時その仕事が消滅する(なかったことになる)か分からないというプレッシャーと常に戦うこととなります。

売り手の気変わり、法令、災害、リスクの発見など、トランザクション中は様々な中断リスクに見舞われるのです。

フィクションであるという以上に、時代背景の差を感じる

本格的な企業再生の姿を描かれる「ハゲタカ」および「ハゲタカⅡ」の内容は、バブル期から2000年代前半までが描かれ、既に20年以上前の時代が舞台です。

その当時は日本国内における再生やM&Aはまだ草創期とも呼べる頃であり、アイディア次第では派手な立ち回りが可能な時代でもありました。(具体名は控えますが、実際に似たような動きをしていたファンドも存在します。)

他方、その後から現代に至るまで、日本においても再生に関する法整備が進み、仕事内容もパッケージ化されてきた歴史があります。ビジネス環境は大きく変化しています。

特に中小企業の再生に関しては、公的機関である中小企業再生支援協議会の存在や、各種ガイドラインの整備も十分に拡充されています。そのような状況下、小説で書かれるような縦横無尽な動きをするメリットが少ないというのが現状と言えます。

筆頭債権者になれば「買い叩く」は不可能ではないが。

実際のところ、債務超過に陥っているような会社であれば、筆頭債権者にさえなれれば、期限の利益の喪失や破産宣告等を盾に取った強硬手段(経営権の奪取)を取ることも理屈上不可能ではありません。

ただ、銀行も含めそのような動きをする会社が存在しないのは、風評の面が大きいように感じます。

日本の金融界は狭い界隈ですので、横暴なふるまいをするプレーヤーは噂が回り、早晩立ち位置を失いかねません。やはり「ハゲタカ」に描かれるドラマティックな買収はフィクションであると割り切りましょう。

企業買収を伴う現実の企業再生案件は、緻密な利害関係の上に成り立つ地道な仕事

現在でも、実際に買収を伴う企業再生は多数行われています。

私的整理であればスポンサー型再生、法的整理であればプレパッケージ型と呼ばれる方式です。

「債務超過だから安く買える」は誤解

こういった買収は「債務超過だから安く買える」と誤解されがちですが、実際のところ多額の銀行債務を外さなければ再生などままならず、そのための資金投入が必要である状況がほとんどです。

債権者としては、タダ同然で放棄するくらいであれば破産宣告を掛けるといった強硬手段も用意されているので、基本的に強い立場にいるのです。そのような債権者(主に銀行)と利害を調整したうえでようやく成り立つのが再生フェーズでの企業買収です。

「再生すれば大儲け」は再現性が低く、張り込めるプレーヤーは少ない

この様に再生フェーズの会社の買収は相応の資金が必要であり、実際のところ広めに募集したとしても買収先が見つかることのほうが珍しい状況です。

小説「ハゲタカ」では、再生すれば大儲けといった描写もありますが、実際にその可能性に掛けて投資できる会社は早々存在しないのが現実と言えます。

小説派の方、NHK版ドラマはイチオシです。

NHK版ドラマは小説とは別のオリジナルのストーリーが展開されますが、完成度は非常に高い内容です。主演の大森南朋氏の素晴らしい演技を中心に、クールかつアグレッシブな内容で企業再生の仕事が描かれます。

FAS業界への転職希望者であれば、モチベーションアップのためにも必見です。未視聴でしたらぜひこれを機にいかがでしょうか。

確認したところ、ドラマ版がみられるVODは少数派ですが、U-NEXTでは配信されているようです。(2009年の映画は、2007年のドラマの続編的位置づけになっています。)

※登録前に配信が継続しているか確認することをオススメします

ドラマ派の方、小説版も大変オススメです

ドラマでも大変好評な本作ですが、小説も巧みな文章表現で引き込まれる良作です。

特にNHK版から入った方は、また別のストーリーが展開されますので、フレッシュな楽しみを感じられると思います。

新装版 ハゲタカ(上) (講談社文庫)
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FASは、筆者が8年以上働いてきた実感として、上を目指す人に対しては自信をもって勧められる職業です。思い立ったが吉日、これを機にFASキャリア実現への第1歩を踏み出しましょう。

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